1−2 適用除外 (法116条)
重要度 ⚪︎⚫︎⚫︎


条文

1)第1条から第11条まで、次項、第117条から第119 条まで及び第121条の規定を除き、この法律は、船員法第1条第1項に規定する船員については、適用しない。

2)この法律は、同居の親族のみを使用する事業及び家事使用人については、適用しない。(平20択)(平23択)


ここをチェック

□ 適用除外者とは、「働く者」として賃金を得ていても、労働基準法上の「労働者」として保護の対象とならない者をいい、具体的には、次のとおりである。

船員
労働憲章、用語の定義、罰則規定を除き、労働基準法は適用されず、船員法が適用される。 (平3択)(平10択)(平11択) (平16択)
同居の親族のみを使用する事業
世帯を同じくして常時生活を共にしている6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族(民725条)のみが働く事業。(令4択)
家事使用人
家庭において家事一般に従事するために使用される者。



ちょっとアドバイス
(1)同居の親族について

□ 同居の親族であっても、同居の親族以外の労働者を常時使用する事業において作業等に従事し、次のイ)~ハ)のすべての要件を満たす者については、一般に私生活面での相互協力関係とは別に独立した労働関係が成立しているとみられるため、労働者として取り扱う(昭54.4.2 基発153号)。(平3択)(平7択)(平29択)

イ)事業主の指揮命令に従っていることが明確であること。

ロ)労働時間等の管理、賃金の決定及び支払の方法等からみて、就労実態が他の労働者と同様であること。

ハ)他の労働者と同様の評価に応じて賃金が支払われていること。


(2)家事使用人について

□ 家事使用人であるか否かは、従事する作業の種類、性質の如何等を勘案して具体的に当該労働者の実態により判断すべきである(平11.3.31 基発168号)。(平23択)

↓ 具体的には…

労働基準法の適用を受ける
個人家庭における家事を事業として請け負う者に雇われて、その指揮命令の下に当該家事を行う者は家事使用人に該当しない。(平13択)
労働基準法の適用を受けない
法人に雇われ、その役職員の家庭でその家族の指揮命令の下で家事一般に従事している者は家事使用人である。 (平7択)(平16択)(平29択)
(3)特別法による適用除外

イ)国家公務員の場合 (国家公務員法附則16条)(平3択)(平10択)

労働基準法の適用を受ける

a)特別職の職員(裁判官・国会職員等)

b)国営事業及び行政執行法人の職員

労働基準法の適用を受けない
一般職(事務職)の職員
*人事院規則の適用を受ける

ロ)地方公務員の場合 (地方公務員法58条3項~5項)

労働基準法の適用を受ける 現業職(交通局・環境局・水道局等)の職員
労働基準法の一部につき適用を受けない 一般職(事務職)の職員
<参考> 一般職の職員が適用を受けない規定
法2条(労働条件の決定)、法14条2項・3項(有期労働契約の基準・行政指導)、法24条1項(賃金支払)、法32条の3~5(フレックス・1年変形・1週間変形)、法37条3項(代替休暇)、法38条の2第2項・3項(事業場外みなし制)、法38条の3及び38条の4(裁量労働制)、法39条6項(年休の計画付与)、法75条~93条(災害補償・就業規則等)、法102条(労働基準監督官の職務)等


参考条文
国及び公共団体についての適用 (法112条)

 この法律及びこの法律に基いて発する命令は、都道府県市町村その他これに準ずべきものについても適用あるものとする。

2 使用者 (法10条)
重要度 ⚪︎⚫︎⚫︎


条文

 この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。(平24択)(令6択)(平21選)

ここをチェック

□ 「事業主」とは、事業の経営の主体をいい、会社その他の法人の場合はその法人個人事業の場合は事業主個人をいう。(令2択)

□ 「事業の経営担当者」とは、事業経営全般について権限と責任を負う者で、法人の代表者、取締役、理事などをいう。

□ 「事業主のために行為をするすべての者」とは、人事、給与などの労働条件の決定や労務管理の実施等について、一定の権限を有し責任を負う者で、部長職・課長職などにある者などをいう。なお、法9条にいう「労働者」でありながら、その者が同時にある一定の事項に係る権限と責任においては「使用者」と判断されることがある。(令2択)(令5択)

□ 「使用者」とは、労働基準法上の義務についての履行の責任者をいい、その認定は、部長、課長等の形式にとらわれることなく、実質的に一定の権限を与えられているか否かによって判断される。単に、上司の命令の伝達者にすぎない場合は使用者とされない(昭22.9.13 発基17号)。(平11択)(平26択)(令2択)


□ 社会保険労務士は、社会保険労務士法により労働基準法に基づく申請等について事務代理をすることができるが、事務代理の委任を受けた社会保険労務士がその懈怠により当該申請等を行わなかった場合には、当該社会保険労務士は、法10条にいう使用者に該当するものであり、本法違反の責任を問われることとなる(昭62.3.26 基発169号)。 (平15択)(令4択)

□ 労働契約法において「使用者」とは、その使用する労働者に対して賃金を支払う者をいう。これは、労働者と相対する労働契約の締結当事者としての使用者であり、個人企業の場合はその企業主個人を、会社その他の法人組織の場合はその法人そのものをいうものであり、労働基準法10条の「事業主」に該当するものであって、労働基準法の「使用者」より狭い概念である(平20.1.23 基発0123004号)。


ちょっとアドバイス
(1)出向労働者に係る使用者の概念

在籍型の出向労働者については、出向元及び出向先の双方との間に労働契約関係が存在するため、出向元及び出向先に対して、それぞれ労働契約関係が存する限度で労働基準法の適用がある。在籍出向に当たっては、出向先での労働条件や出向元における身分の取扱い等は、出向元、出向先及び出向労働者三者間の取り決めによって定められるが、それによって定められた権限と責任に応じて出向元の使用者又は出向先の使用者が労働基準法における使用者としての責任を負う(平11.3.31 基発168号)。 (平12択)(平14択)(平19択)(令6択)

移籍型の出向労働者については、出向元との労働契約関係は消滅し、出向先との間にのみ労働契約関係が存在するため、使用者としての責任はすべて出向先の使用者が負う(平11.3.31 基発168号)。

<在籍型出向>
  出向契約  
出向元 ◀︎   ▶︎ 出向先  
   
     
労働契約 指揮命令 労働契約
    ▶︎ 労働者 ◀︎    
       
  出向契約  
出向元 ◀︎   ▶︎ 出向先  
   
     
労働契約 指揮命令 労働契約
    ▶︎ 労働者 ◀︎    
       
  出向契約  
出向元 ◀︎   ▶︎ 出向先  
   
     
労働
契約
指揮命令 労働契約
    ▶︎ 労働者 ◀︎    
       
<移籍型出向>
  出向契約  
出向元 ◀︎   ▶︎ 出向先  
   
       
指揮命令 労働契約
      労働者 ◀︎    
       
  出向契約  
出向元 ◀︎   ▶︎ 出向先  
   
       
指揮命令 労働契約
      労働者 ◀︎    
       
  出向契約  
出向元 ◀︎   ▶︎ 出向先  
   
       
指揮命令 労働契約
      労働者 ◀︎    
       
(2)派遣労働者と労働基準法の関係
① 使用者の概念
<派遣契約>
派遣元 ◀︎   ▶︎ 派遣先  
   
     
雇用   指揮命令
    ▶︎ 労働者 ◀︎    
       
派遣元 ◀︎   ▶︎ 派遣先  
   
     
雇用   指揮命令
    ▶︎ 労働者 ◀︎    
       
派遣元 ◀︎   ▶︎ 派遣先  
   
     
雇用   指揮命令
    ▶︎ 労働者 ◀︎    
       

* 自己の雇用する労働者を当該雇用関係の下にかつ他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させる契約(派遣法2条)

<請負契約>
請負人 ◀︎   ▶︎ 注文主  
   
       
雇用 指揮命令
    ▶︎ 労働者      
       
請負人 ◀︎   ▶︎ 注文主  
   
       
雇用 指揮命令
    ▶︎ 労働者      
       
請負人 ◀︎   ▶︎ 注文主  
   
       
雇用 指揮命令   
    ▶︎ 労働者      
       

* 労働の結果としての仕事の完成を目的とする契約(民法632条)

□ 派遣労働者については、派遣労働者と労働契約関係にある派遣元が労働基準法の適用を受けるため、原則として、派遣元の使用者が派遣労働者についての使用者としての責任を負う。(平24選)

□ 労働基準法の適用に関する特例は、労働者派遣という就業形態に着目して定められたものであり、業として行われる労働者派遣だけではなく、業として行われるものではない労働者派遣についても適用される。また、労働者派遣法に基づき行われる労働者派遣でない場合でも、その適用を受ける


② 労働基準法の適用に関する特例

□ 労働者派遣法44条においては、労働基準法の適用に関する特例が定められており、労働者派遣の実態から派遣元に責任を問い得ない事項、派遣労働者の保護の実効を期する上から派遣先に責任を負わせることが適切な事項については、派遣先の使用者が労働基準法における使用者としての責任を負う(平11.3.31 基発168号)。 (平10択)(平18択)(令2択)

↓ 具体的な特例範囲は…

□ 次のいずれにも該当する労働者派遣について適用される。

イ)派遣元労働基準法の適用事業の事業主であり、かつ、派遣される労働者が法9条に規定する労働者であること。

ロ)派遣先が事業又は事務所(労働基準法の適用事業に限らない)の事業主であること。

両使用者の責任 【基本的人権の保障を最優先すべきこと】
均等待遇、強制労働の禁止、徒弟弊害の排除、申告を理由とする不利益取扱いの禁止
派遣元使用者の責任 【労働契約に基づいてその効力を確定しなければならないこと】
労働契約の締結、変形労働時間制の定め、36協定の締結及び届出、賃金及び割増賃金の支払、年次有給休暇の付与、就業規則、寄宿舎、災害補償、年少者の証明書、帰郷旅費(年少者)、産前産後休業
派遣先使用者の責任 【就労事業所単位で労働者を保護しなければならないこと】
公民権行使の保障、労働時間・休憩・休日の適用、時間外及び休日労働の適用、上記以外の年少者及び女性に関する保護規定

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スマ本インプット 一問一答
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法人に雇われ、その役職員の家庭において、その家族の指揮命令の下で家事一般に従事している者については、法人に使用される労働者であり労働基準法が適用される。
(H29-02 イ)

▶︎ 解答はクリック

答え:×
法9条、法116条、昭63.3.14基発150号、平11.3.31基発168号
家事使用人であるか否かを決定するに当たっては、従事する作業の種類、性質のいかん等を勘案して具体的に当該労働者の実態により決定すべきものであり、家事一般に従事している者はこれに該当するが、法人に雇われていても、その役職員の家庭において、その「家族の指揮命令の下」で家事一般に従事している者は「家事使用人」であり、労働基準法は適用されない。

こんな過去問が出る!

事業における業務を行うための体制が、課及びその下部組織としての係で構成され、各組織の管理者として課長及び係長が配置されている場合、組織系列において係長は課長の配下になることから、係長に与えられている責任と権限の有無にかかわらず、係長が「使用者」になることはない。
(R02-01B)

▶︎ 解答はクリック

答え:×
法10条、昭22.9.13発基17号
使用者の認定は部長、課長等の形式にとらわれることなく各事業において、労働基準法各条の義務について「実質的に一定の権限を与えられているか否か」によって判断する。このため係長であっても、その者に「責任と権限があれば」使用者になり得る。

こんな過去問が出る!

派遣労働者が派遣先の指揮命令を受けて労働する場合、その派遣中の労働に関する派遣労働者の使用者は、当該派遣労働者を送り出した派遣元の管理責任者であって、当該派遣先における指揮命令権者は使用者にはならない。
(R02-01E)

▶︎ 解答はクリック

答え:×
法10条、労働者派遣法44条、平11.3.31基発168号
派遣労働については、労働基準法の条文の一部について、「派遣先事業を派遣中の労働者を使用する事業とみなして適用する特例」があり、このため、設問の指揮命令権者は労働基準法の使用者になり得る。