この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。(平10択)(令4択) |
□ 「労働者」に該当するか否かは、雇用、請負、委任等の契約の形式にかかわらず、実体として、使用従属関係(事業に使用され、労働の対償として賃金が支払われる)が認められるか否かにより判断される。(平27択)(平29択)(令4択)
□ 法人の重役等で業務執行権又は代表権を持たない者が、工場長、部長の職にあって賃金を受ける場合は、その限りにおいて本条の労働者である(昭23.3.17 基発461号)。 (平13択)(平19択)(平29択)
□ 労働者とは、事業又は事務所に使用される者で賃金を支払われる者であるから、法人、団体、組合等の代表者又は執行機関たる者の如く、事業主体との関係において使用従属の関係に立たない者は労働者ではない(昭23.1.9 基発14号)。(令4択)
□ 請負契約によらず、雇用契約により、使用従属関係が認められる大工は、本条の労働者である(平11.3.31 基発168号)。(平29択)
□ 子役あるいは芸能タレントについて、①当人の提供する歌唱、演技等が基本的に他人によって代替できず、芸術性、人気等当人の個性が重要な要素となっていること、②当人に対する報酬は、稼働時間に応じて定められるものではないこと、③リハーサル、出演時間等スケジュールの関係から時間が制約されることはあっても、プロダクション等との関係では時間的に拘束されることはないこと、④契約形態が雇用契約ではないことのいずれにも該当する場合には、法9条の労働者ではない。(令1択)
□ 「インターンシップ」における学生についての判断基準 (平9.9.18 基発636号)。
労働者に該当する | 労働者に該当しない |
直接生産活動に従事するなど当該作業による利益・効果が当該事業場に帰属し、かつ、事業場と学生との間に使用従属関係が認められる場合 | その実習が見学や体験的なものであり、使用者から業務に係る指揮命令を受けていると解されないなど使用従属関係が認められない場合 (平30択) |
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◇指揮監督下vs教育的研修◇ |
臨床研修は、医師の資質の向上を図ることを目的とするものであり、教育的な側面を有しているが、そのプログラムに従い、臨床研修指導医の指導の下に、研修医が医療行為等に従事することを予定している。そして、研修医がこのようにして医療行為等に従事する場合には、これらの行為等は病院の開設者のための労務の遂行という側面を不可避的に有することとなるのであり、病院の開設者の指揮監督の下にこれを行ったと評価することができる限り、労働基準法9条所定の「労働者」に当たるものである(研修医関西医科大学付属病院事件・平17.6.3 最高裁第2小)。(平29択) |
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◇トラック持ち込みの労働者vs労災保険の適用◇ |
◇トラック持ち込みの労働者vs労災保険の適用◇ |
上告人は、業務用機材であるトラックを所有し、自己の危険と計算の下に運送業務に従事していたものである上、D紙業は、運送という業務の性質上当然に必要とされる運送物品、運送先及び納入時刻の指示をしていた以外には、上告人の業務の遂行に関し、特段の指揮監督を行っていたとはいえず、時間的、場所的な拘束の程度も、一般の従業員と比較してはるかに緩やかであり、上告人がD紙業の指揮監督の下で労務を提供していたと評価するには足りないものといわざるを得ない。そして、報酬の支払方法、公租公課の負担等についてみても、上告人が労働基準法上の労働者に該当すると解するのを相当とする事情はない。そうであれば、上告人は、専属的にD紙業の製品の運送業務に携わっており、同社の運送係の指示を拒否する自由はなかったこと、毎日の始業時刻及び終業時刻は、右運送係の指示内容のいかんによって事実上決定されることになること、右運賃表に定められた運賃は、トラック協会が定める運賃表による運送料よりも1割5分低い額とされていたことなど原審が適法に確定したその余の事実関係を考慮しても、上告人は、労働基準法上の労働者ということはできず、労働者災害補償保険法上の労働者にも該当しないものというべきである(横浜南労働基準監督署長事件・平8.11.28 最高裁第1小)。(令2選) |
□ 共同経営事業の出資者であっても、当該組合又は法人との間に使用従属関係があり、賃金を受けて働いている場合には、法9条の労働者である(昭23.3.24 基発498号)。
□ 都道府県労働委員会の委員は、都道府県知事が任免し知事が手当を支給し法令により公務に従事する職員であるが、知事は、委員の職務の執行については指揮命令権がなく、かつ、知事対委員及び委員会対委員の間には使用従属の関係がないため、労働基準法上の労働者とは認められない(昭25.8.28 基収2414号)。
□ 販売部数に応じて報酬を支払われる新聞配達人が、配達部数に応じて報酬を与えているのは、単に賃金の支払形態が請負制となっているだけであって、一般に販売店と配達人との間には、使用従属関係が存在し、配達人も本法の労働者である場合が通例である(昭22.11.27 基発400号)。
□ 組合専従職員と使用者との基本的な法律関係は、労働協約その他により労使の自由に定めるところによるが、使用者が専従職員に対し在籍のまま労働提供の義務を免除し、組合事務に専従することを認める場合には、労働基準法上当該会社との労働関係は存続するものと解される(平11.3.31 基発168号)。
□ 自転車競走に参加しようとする者(競輪選手)は、一定の手数料を添えて競走参加を申込み自転車競走施行者(市営競輪及び県営競輪)はその資格健康状態を検査の上所定の方式によって出場を許すものであって、自転車競走施行者は参加者に競走の場を提供するものである。又参加者に支給される日当及び宿泊料は実費弁償として支給されるものであり、賞金は競走参加の目的物であるから、共に労働の対償として支給されるものではなく、従って自転車競走参加者は法9条の労働者ではない(昭25.4.24 基収4080号)。
□ 労働契約法において「労働者」とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいう。「労働者」に該当するか否かは、労務提供の形態や報酬の労務対償性及びこれらに関連する諸要素を勘案して総合的に判断し、使用従属関係が認められるか否かにより判断されるものであり、これが認められる場合には、「労働者」に該当するものである。これは、労働基準法9条の「労働者」の判断と同様の考え方である(平20.1.23 基発0123004号)。